コグナビ新卒に関しての全体的な検討議題

1. 全体設計

1-1. 再訪問される設計

「再訪問される設計というのが全くない」というのがこのサービスの最も大きな問題だと思っていました。それを受けて「再訪問される設計」をどのように作るのかというのが今回のリニューアルの重要なテーマという認識でした。

再訪問するための仕掛けや要素は様々あります。その中で、新規企業の追加は最も大きな要素かもしれません。しかしながら、企業を限定的にしている以上、他の新卒メディアと比較して「新規の企業掲載」が大量に行われることはありません。

再訪問させる設計の一つとして、限定された企業であってもその企業の魅力を一方向ではなく、多方向から伝えることで新たな発見を提供できるかもしれません。

例えば、ある企業があったとしても、多様な切り口で取り上げることが可能です。

学生が100人いれば100通りの企業の選び方があります。学生が何に注目するかわからない以上、多様な視点を提供できるシステム設計が求められます。

1-2. 特徴の明確化

コグナビはサイト上で特徴というものがほとんど明確化されていません。

「専門や好きで企業を探す」がありますが、それはビジネスモデルの強みであって、それが学生に対しての魅力的な特徴にはなっていない可能性があります。

例えば、あるレストランチェーン店の強みがセントラルキッチンのクオリティで、これは他社が真似できない強みだったと仮定します。それであっても食事を食べにくる方に「セントラルキッチン」の意味が伝わらないのと同様に、学生にとって「部門毎の詳細な情報」やそれらのマッチングは魅力的に映っているのでしょうか。

貴社は上場企業ですが「株主に受ける特徴」・「新卒学生に受ける特徴」・「クライアント企業に受ける特徴」は全く異なる可能性があります。(同じ企業を指しているにも関わらず)

今のコグナビ新卒は学生に魅力を伝えようという意識が薄いと感じるので、変換が必要です。

1-3. マッチングからの脱却

コグナビ新卒は「企業の部門毎の細かい募集情報を持っている」という点と、「セミナーという学生の獲得手段を持っている点」が他社に真似できない強みになります。その結果として、両者のマッチングが生み出されます。

狭義のAIによるマッチング精度を「マッチング」と呼ぶ場合、このマッチング精度の必要性は求人件数と利用者数によって大きく変わってきます。

例えば1000件の求人であれば、マッチング精度というのはそれほど必要ありません。エリアと簡単な希望条件で検索すると100件程度となるため、学生は全部見るほうが最適解になります。

このように求人件数が少ない場合、そこにAIを用いた細かい検索の必要性は急速に低下します。一方で求人が大量にある場合は、機械的に選別してあげる重要性が増すことになります。

件数によってマッチングがそれほど重要でないとした場合に、何が重要かと言えば「求職者にどのような納得度を与えるか」という話だと思います。

「どのようにランキングをつけるか」ではなく「どのように見せるのか」という視点であり、これも広義のマッチングではありますが、所謂「マッチング」というものとは別のものと考えるほうが適切です。

マッチングという抽象度が高い言葉が一人歩きしており、マッチングという単語からの脱却が必要と思われます。

(それはマッチングを否定するものではなく、それを違う視点から見たものということです)

1-4. 一気通貫した内容を

セミナーからWEBサイト、もしくはメールマガジンも含めて、全ての内容を一気通貫したコンセプトで作っていくことが大事です。

これはコンセプトと呼ばれるものですが、この分かりやすいコンセプトをどのように作っていくのかというのが重要になっています。

サイト動線も同様で、現在は「コグフェスでいいねを獲得する」といった方針がありますが、より最適な形があるように思われます。

1-5. 旗を立てる

(これは不要かもしれません)

営業上の話ですが「エントリー数が少ないという状況で、どうやって販売をしていくのか」というテーマと戦う必要があります。エントリー数を増やすという施策を続ける一方で、企業側からの共感を得られるコンセプトをもっと明確にしてもいいと思いました。

1-5-1. コンセプト案

大きめのコンセプトのブレスト(案)

企業に向けて

コグナビの存在は、日本や製造業にどのような意味をもたらすのでしょうか。

学生に向けて

整理すると、
日本を元気にするためには製造業を再興したい。
そのためには、理系学生が本当に大事で、日本の未来にとって彼らは宝である。
彼らの専門性と、それが一番発揮できる企業を日本全体で最適にマッチングできるプラットフォームを作っていく。 それがコグナビ新卒だ。
(言葉がナショナリズム的にならないように)

2. サイト設計

2-1. トップページ

トップページには、ログアウトトップページとログイントップページがあります。

ログアウトトップページは使う人は少ないですが、サイトにとっては顔のような存在です。

学生も見ますが、企業もこのページを最初に見ることになります。ここには、コグナビはこういうサイトだというわかりやすいページが必要です。

ログアウトページがほぼ使わないのに対して、ログイントップページは何回も繰り返して使うページです。そのため更新性や新しい発見を設計していく必要があります。

前述の「その企業の魅力を一方向ではなく、多方向から伝える」特集的なコンテンツを適切に配置し、それをメール等でも紹介していくことになります。

2-2. 検索結果画面

検索結果画面は商品の陳列棚であり、訪問した学生が「良いものがある」と認識させるページです。

現在はマッチ度というもので表示されていますが、マッチ度という概念には当然「精度が高いもの」と「低いもの」が存在します。現状のコグナビは精度が低いマッチ度なので、利用しても信頼が構築されません。

また精度が高いマッチ度だとしても、学生からみると精度の是非は一見してわかるものではありません。そのため学生が企業にどのように魅力を感じてもらうのかという設計がとても大事です。

具体的には、企業の特徴をわかりやすく表示するなど、いろいろな工夫が必要になります。

2-3. 求人情報

カタログ、コグフェスを含めた求人情報は、全般的に分かりづらいです。

文字量的には一定量がありますが、学生にとって魅力的な情報に見えません。
例えば業務内容にしても「電気機器の生産管理」といった表現を、学生にとって分かりやすい内容にしていく必要があります。かみ砕いてわかりやすく作成するという表現が適切かもしれません。

おそらく全般的なわかりにくさの解決と、求人項目の追加等の修正が必要です。

3. システム

3-1. リファクタリングの是非

システムに関しては、現在インドで再作成・リファクタリングしているとお聞きしましたが、現状の仕組みをリファクタリングする意味はあまりないのかなと思っています。それならば、今の仕組みを動かし続ける、もしくは速度向上する方にコストを投下する方が正しいように思います。

特集的なIDの追加や、求人内容の見直し等、多くの変更が想定されます。1年間かけてリファクタリングしても、それを再度修正するのかという問題があります。

3-2. ID等の設計

コグナビは基礎部分のDB設計に問題がありそうです。求人が一つしか持てないということや、企業と事業所の取扱いのIDに不整合があって、これは求人に不適切だと思っています。

このあたりは正しいデータ構造を再設計する方が将来的には良いと思いますし、今リファクタリングで進めているならば、このあたりも一挙に進めた方が絶対に良いのではないかと思っています。

4. 体制

4-1. 制作体制

人材紹介から広告ビジネスへの変換は似ているようで様々な内容が異なります。
主要KPIもそうですし、コストなども変わってきます。その中の一つとして人材紹介において重要だった「コンサルタントの力による魅力づけ」が広告ビジネスでは不可能になるということがあります。

その役割を、求人広告においては求人広告自体が代替することになります。

そのため「人材紹介の時の求人広告」と、「広告ビジネスの求人広告」は目的や意味合いが大きく異なります。改めて求人原稿自体を目的に合わせて最適化するとしても、広告掲載モデルに対応する制作体制が整っていないのは課題です。

4-2. 企画フェーズ

WEBサービスの設計においては全体を企画する担当が必要です。
家を建てる際における建築士の役割ですが、これがサイト設計においてはとても大事になってきます。

佐藤さんは建築士ではなく、より大きな家のオーナーでありビジョンを語る役割であり発注側になります。その発注者側の要望を「専門家」がウェブサイトに適切に変換していく手続きが現在はうまく機能していません。(もちろん私の力不足もあり機能させられませんでした、申し訳ありません。)

佐藤さん、石田さん、畑中さんは優秀な方なので解決できるとは思いますが、この企画フェーズの方針決定がうまくできると良いなと思っています。